肝芽腫の治療で使われるシスプラチン(商品名:ブリプラチン、ランダ)の副作用で聴力障碍が起きることがあります。一般には、総量が300mgを超えると高音域に障害が出始め、総量600mgを超えると難聴になることが多くなります。もちろんすべての子どもに出るわけではありませんが、聴力障害が出た場合は薬を止めても落ちた聴力は戻りません。 |
1. | 現れるとしたら何時ごろから? |
2. | 聴力障害の種類と起きるしくみ |
3. | 聴力検査の方法 |
4. | 定期的な検査のみでよいの? |
5. | 補聴器は必要? |
1.現れるとしたら何時ごろから? |
普通は薬を使っている間に現れますが、薬を使わなくなって半年以上経ってから落ち始めることもあります。 |
2.聴力障害の種類と起きるしくみ |
聴力障害には種類がありますが、肝芽腫の治療で起きるものは、「感音性難聴」です。 これは聴覚神経が抗がん剤によって障害を受けたために起きる難聴で、医学的な治療はほとんど出来ません。治療を終了してかなり時間が経ってから出てくる場合は、抗がん剤でダメージを受けながらぎりぎり機能を保っていた聴覚神経が疲労やストレスなど何らかの負荷が身体にかかってしまった時にダウンしてしまうことによって起きるそうです。 また、シスプラチンの副作用による聴力障害は「高音急墜型」という特徴があります。 これは、低音から日常よく使われる音域である2000ヘルツまでの音は正常に聞えるのに、それ以上の高い音から急に聞こえなくなるタイプです。電子音の高音は全く聞こえないこともありますが、さまざまな周波数が混じっている自然界の高音は電子音よりは聞こえます。 |
3.聴力検査の方法 |
通常は『オージオメーター』という機械を使って測定しますが、肝芽腫の子のように小さいとなかなか難しく、正確な結果が出ないこともあります。 その他に「ことばの弁別検査」というのもあり、これは実際どの程度ことばを聞き取れるかを知る検査ですが、こちらは8才くらいにならないと出来ません。 そこで家庭でもできる簡単な方法をひとつ紹介します。 電子体温計の計測音が聞こえるかどうか、お子さんに確かめるという方法です。右の図例として出ている子の場合、測定音は聞こえません。その他にも「炊飯器のお知らせ音」、「洗濯機のお知らせ音」、「腕時計のアラーム」なども聞こえません。これらの音が聞こえているかどうか、お子さんに聞いてみるのが一番簡単な聴力検査です。 (*右の図はCITA6回とITEC6回で治療した肝芽腫の子の聴力検査表。両耳同等に悪いが、片耳のみデジタル補聴器を使用。) |
高音急墜型の薬剤性難聴 |
4.定期的な検査のみでよいの? |
風邪をひいたり疲れがたまっていたりする時に、急に「聞こえが悪くなったかな」と思うことがあります。そういう場合には定期外来でなくても検査をしてもらうと安心です。聴力の低下が少なければビタミン剤が処方されることがありますが、低下が大きい場合にはステロイドを内服することもあります。聴力の落ち始めにステロイドを内服すると、落ちた分だけはとりあえず回復することがあります。しかし、ある程度時間が経ってしまうとステロイドを内服しても元に戻りませんので、普段から気をつけてみてあげて、聴力が急に落ちたように感じた時はすぐに対処することが大切です。 |
5.補聴器は必要? |
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