肝芽腫 生体肝移植 home
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肝切除の項で説明したとおり、切除すると肝臓の区域がひとつも残せない場合、あるいは血管が残せない場合、肝切除は不可能ですので肝移植が唯一の救命手段になります。

欧米では脳死肝移植が盛んに行われていますが、日本では脳死ドナー(臓器提供者)は少ないため、基本的に親御さん等から正常な肝臓の一部を切り取って移植する生体肝移植が行われます。
肝芽腫に対する生体肝移植はすでに保険適応となっており、切除不能な肝芽腫に対しての治療法として、確立されたものとなっています。

通常、ドナーはご両親がなることが多いですが、日本移植学会では、民法上の親族の範囲である6親等以内の血族、3親等以内の姻族(配偶者ならびに配偶者の3親等以内)の範囲内で選択することを倫理指針として原則としています。年齢は65才以下としている施設が多いようです。血液型は同じ(血液型一致)か、輸血出来る血液型(血液型適合:例えばO型からA型など)が基本です。血液型不適合の場合の輸血も不可能ではありませんが、成績は低下します。

    北河徳彦(小児外科指導医。小児がん認定外科医。神奈川県立こども医療センター小児がんセンター外科系部門長)

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1. 肝移植の準備
2. 肝移植手術
3. 手 術 後
4. おわりに



 p 1.肝移植の準備 p

肝移植手術は拒絶反応、感染症など肝切除手術と比べて術後合併症の頻度が高く、術前の準備もより入念なものになります。レシピエント、ドナー共に血液検査、CTなどの画像検査などを行います。ドナーからいただく肝臓の大きさがレシピエントに適合するか、ドナーに悪性腫瘍はないか、など詳細に調べます。



 p 2.肝移植手術 p

患児(レシピエント)の手術
@ 開腹、肝臓の全摘出。腫瘍のある肝臓を完全に摘出します。
A ドナー肝を身体に入れる。
B 血管等の吻合。通常、肝静脈、門脈、肝動脈の順に血管をつなぎます。その後胆管と腸をつなぎます。
C 閉腹。
肝移植手術の行程は、上記のように傷んだ臓器を取り出し、血管等をつなぐというものです。肝切除では取れない巨大な腫瘍や、血管に浸潤した腫瘍を取らなければならず、またつないだ血管の血流のチェックなど時間を要する行程が多いため、手術は長時間に及ぶことが普通です。
臓器提供者(ドナー)の手術
通常の肝切除手術と同じように、肝臓の一部を切除します。レシピエントの体格に合わせて、外側区のみ、左葉、右葉など取り方を選択します。



 p 3.手 術 後 p

患者(レシピエント)
術後は厳重なICU管理が続けられます。特に重要なことは、出血の有無、移植した肝臓に血液がちゃんと流れているか、肝臓の働きはどうか、拒絶反応はないか、感染症はないか、などです。

通常の手術と違い、移植手術では術後すぐから免疫抑制剤を使います。免疫抑制をすると手術後の大敵である感染症に対して弱くなるので、抗生剤などのきめ細かな管理が必要です。

また、つないだ血管が詰まらないような薬も使いますが、これは裏を返せば出血しやすくなる薬です。このように、移植手術では通常の手術と比べ、リスクの高い治療をしなければなりません。これらをクリアしてようやく手術が成功したと言えます。

術後落ち着いたら、通常は化学療法をすることが多いです。AFPが順調に正常化したら退院が見えてきます。

退院後も免疫抑制剤等の薬を毎日服用します。これは例外を除き、生涯継続しなければなりません。免疫抑制剤による感染防止の目的等で、しばらくの間は生活制限があります。これは徐々に解除されていきます。拒絶反応のチェック等が必要ですので、肝芽腫そのものは治癒しても、通院は生涯必要です。肝移植患者さんは身体障碍者1級と認定されます。
臓器提供者(ドナー)
通常の肝切除の術後と同様、1〜2週間で退院となります。術後1ヶ月程度は創部の痛みや不快感があるのが普通です。肝臓手術そのものは、身体への負担が比較的大きな手術です。したがって、仕事の復帰までには十分な余裕を持たれることをお勧めします。



 p 4.おわりに p

肝移植の導入により、今まで救命することが出来なかった高度進行肝芽腫の患者さんを救命することが出来るようになってきました。肝移植が成功し、肝芽腫も再発せず見違えるように元気になった患者さんも増えています。しかし肝移植手術の合併症は完全になくすことは出来ておらず、そのために命を落とすこともゼロではありません。また肝移植をしても肝芽腫のコントロールが出来ず、救命出来ないこともあります。免疫抑制剤も一生飲み続けなければなりません。肝移植は決して万能ではなく、あくまでも最終手段としてお考え下さい。

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